2018/01/28(日)読了。
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社会人1年目もそろそろ終わりという頃合いになって,ビジネスの基本を書籍という形で学んでみたいと思ったので購入。書展で目立つ,墨色のカバーに光沢のあるワインレッドの文字という装丁に目が留まって購入。
どうでもいいけど,カバーの紙質がすっごい粗いサンドペーパーみたいな手触りでとっても心地よい。こういうのは案外重要な気がするなー。
さてこの本はタイトル通り「ビジネスの基本」を扱っているが,社会人としてこういうのをしっかりと学んだことのある人は随分少ないんじゃないかな,と思っている。私が技術系なのでそう感じるだけかもしれないが,社会全体にこういう知識や経験は自助努力ありきで回っている気がする。
まぁ何でもかんでも「研修」という形でお膳立てをされるのも,返って腑抜け人間を量産しそうでどうかと思うので現状はこれでもよいのかもしれない。何でもかんでも研修を用意すれば解決するわけではなくて,そういうモチベーションとかを植え付ける素地が必要なんだろうが,必然的に強制力(「矯正力」)は薄れるし短期的には達成しにくいというのは理解できる。
話が逸れたが,この本では「100の基本」を紹介している。
この本に限らず私は「~~のための○○個の~~」という表現が,耳障りを優先しただけ(「100」っていう数字に必然性ないじゃん!)の薄っぺらいものに見えてしまうので何となく忌避しているのだが,それでもいくつかは間違いなくエッセンスは含まれているだろうと思って心を入れ替え読むことにした。
ところどころで「ワンモア・アドバイス」と称してコラムがあるのだが,参考になる部分が多い。「これは知っとけ」みたいな基本的な情報もわざわざ紹介してくれているので好感が持てる&とてもありがたい。
さて私は今こうして紹介記事を書いているわけだが,100個全てを記すのも芸がないので「これは!」と思ったもののみピックアップしてみた。ではいってみよー!
- 根拠は3つ ~ 複数の納得感の高い根拠で,バランス良く主張を支える
- 主張に対して根拠が1つでは弱い。多すぎると,説明を受けた側が第三者に説明しづらい。3つ程度が人間的に程よいマジックナンバー。
- ビジネスフレームワークも応用すると参考になるかも。
- PEST:業界を取り巻くマクロ環境を,政治・法律(Politics),経済(Economy),社会(Society),技術(Technology)の観点から分析
- 3C:市場・顧客(Customer),競合(Competitor),自社(Company)を網羅的に分析することで事業課題を見出したり,戦略の方向性を知る
- 4P:マーケティングにおいて,顧客への適切なアプローチを製品(Product),価格(Price),チャネル(Place),コミュニケーション(Promotion)の4つの組み合わせから検討
- バリューチェーン:事業活動を機能ごとに分類し,どの部分で付加価値が生み出されているか知る
- 反対者には反対者の論理がある ~ 物事を多面的に見ることが全体最適を生み出す
- 「複眼思考」とも言う。
- 会議・交渉でもうまく進めるための力に違いない。取りあえず意識だけはしておこう。
- 内容と人格を分けよ ~ 人格攻撃は何も生み出さない。内容にフォーカスする
- 批判する/される側ともに意識しておかないといけないこと。
- しかし実践するのは相当難しい(だろう)。気づいた時には猛省しよう。
- 単純にしろ,この間抜け ~ 内容を絞り込んだ方がかえって多くを伝えられる
- なんて素敵なキャッチコピーだ。
- “Keep It Simple, Stupid”もしくは”Less is More”,英語は時々お洒落な物の言い方をする。
- 私の持論(どこかで聴いて超納得した)だが,プレゼンの形を取る以上,(一般的な)聴き手は言ってることのイイトコ20%程度しか理解できないと思うようにしている。
- 分けることはわかること ~ 全体を要素にブレークダウンすることで本質に迫る
- 「分解」=「分ける」+「解きほぐす」。なるほど。
- 「モレなくダブりなく」が基本だが,とっても難しい(「モレなく」の方が影響大きいので重要)。
- 「なぜ?」を5回繰り返せ ~ トヨタ式問題解決の基本
- 随所で耳にする「なぜなぜ分析」。
- 具体例がわかりやすい:「Cラインの不良品率が高い」ー(なぜ)→「機械Dが時々不具合を起こす」ー(なぜ)→「部品Eが摩耗して劣化していた」ー(なぜ)→「点検時に見落としてた」ー(なぜ)→「摩耗していたのが目視ではわからない」ー(なぜ)→「摩耗する部分が角度的に見づらいから」
- 対処療法ではなく,本質的で汎用的な対策ができるようになる。
- 競争するのは最悪の戦略 ~ 正面衝突は往々にして消耗戦になる
- 孔子の時代に生まれた「戦略」という単語は「戦を略す」。
- ベストプラクティスに解はない ~ 人真似には限界がある
- ベストプラクティスは基本的に過去・現在志向なので今後は保障されない。
- 安易にベストプラクティスに走って満足するのは愚の骨頂。
- 人は見るまでその商品をほしがらない ~ 製品コンセプトの調査には限界がある
- 文章は人間には早すぎる。
- 往々にして人間は気まぐれである。
- よきリーダーとなるためには,よきフォロワーとなれ ~ リーダーへの準備段階が重要
- フォロワーシップが実は大事。
- 高い視座を持ち,従者以上の存在になって関係を構築せよ。
- しゃべるな,聴け ~ 一方的にいいたいことをしゃべりすぎないようにする
- フォロワーシップ,リーダーシップにも関係しそう。
- 感覚的には相手に6,7割程度の時間を喋ってもらおう。
- 完璧より,やる方がいい ~ まずはやってみることが重要
- Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグの言葉。リーンスタートアップの基本。
- エンジニアとしては手の早さを常々心がけたい。
- 早く行きたいなら一人で,遠くへ行きたいならみんなで行け ~ 大をなすには多くの人を巻き込む必要がある
- 魅力的なビジョンを持ち,筋道を描き,雰囲気のいいチームを作る。
- 結局,対人間の最大の武器はコミュニケーションである。
- Noというな,Howと聞け ~ 頭ごなしの否定はNG
- 相手に考えさせる機会を逃すな
- いい上司ってこういうことがさらっとできる人のことを言うんだろうな
- Win-Win or No Deal ~ 価値創造型の交渉こそいい交渉
- WinWinじゃなければ失敗だ。
- これは会社の先輩も言っていて,ひたすら会議体を重視しがちな企業における重要な問題提起だと思う。
- 会議の目的とその貢献を明示せよ ~ 生産的な会議は基本を押さえるところから
- 言うは易く行うは難し,の典型かと。
- 逆を言えば一番手近に効果を出せるのは,きっとここだよね。
本書の「はじめに」にこうある。
(前略)本書は,学びの書でありながらも実践書としての機能も強く持っています。また,構成の特徴上,前の方から順に読む必要もありません。興味のある章から読んでいただいて構いません。
いま現在,目の前にある仕事と絡めながら辞書的に使っていただいてもいいと思います。そうした使い勝手のよさをぜひ最大限ご活用いただければと思います。
その言葉通り,本書には「あとがき」すらもない。ずいぶん潔い構成ですがすがしいが,そのシンプルさに甘んじることなく,むしろ参考になる部分も多かった。
ページ数はそれなりにあるので(約300ページ)読むのには時間がかかるが,上述の通り各ページは独立なので行き帰りの電車で十分読める。
さてこういう系の本は読んでみて納得感があるのは常のことだが,これに限らず何よりも難しいのは実践であると相場は決まっている。
本書で扱うノウハウには所謂マネージメントの人向けの項目も多く,社会人1年目の私がすぐに実践できるようなものばかりではない(来年度後輩が来るようなことがあれば実践するつもりだが)。そのため実感を持って全部を理解できたかというとそんなことはなく,机上論として頭の片隅に留めたレベルのものが多いのは自覚している。
ただまぁ,こういうのは取りあえず「知っておく」ことだけでも大きな意味があると思う。ただしそれを忘れなければ。
ちょうど今度,モデレータとして活動する機会を与えていただいたので後半の項目については実践してみようと思っている。
突き詰めれば,読書なりセミナーなりで詰め込んだ知識に対して「あ! これ進研ゼミでやったやつだ!!」と思える能力こそが人間を大きく成長させるのだと思う。進研ゼミやったことないけど。
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