イベントレポート:【まつもとゆきひろ氏特別講演】若手エンジニアの生存戦略

どうもayijkです。
社会人になって早1ヶ月が過ぎたのにも拘わらず,ブログの更新が見事に月一になっている今日この頃です。

研修中につきほぼ定時で帰ることができるので,平日・休日ともに継続的にAndroidアプリ開発を進めていたり,ちょくちょく飲み会があったりとQoLの高い生活を送っています。
アプリについては5月中での公開を目指していましたが……もう5月下旬に差し掛かろうというタイミング,あまり信憑性はないかもしれません。。。大枠はできあがっているので,ちょいちょいとしたUIの調整と,オープンソースの表示くらいを追加すれば,くらいの作業量なのですが,まぁ難しいですね。

このAndroidアプリが一段落したら,いよいよiPhoneアプリの沼に足を突っ込もうかと思っています。参加してみたいなぁという勉強会も見つけたので,その参加日に合わせて勉強していきたいな,という感じです。
このあたりはまた進捗があったら報告します。

さて,今日5/20は標記の通り,Rubyの父まつもとゆきひろ氏の講演会に参加する機会に恵まれましたので,そのレポートをしてみます。
ところで,前回のエントリー=イベントレポート:【学生&若手エンジニア向け勉強会】エンジニアのためのブログ講座でこんな一文を紹介しました。

勉強会に参加したらその日のうちにレポートする

これはイベント講師の@ktanaka117さんが仰っていたある種の「縛り」のようなもので,なかなか効果的だと思ったので模倣している次第です。

まぁ,速報的なまとめも一定の需要はあると見込んでまとめてみます。
また,会場ではTwitterのハッシュタグ #colab_matzが提供されていて,参加者各位のナマの声が聴けましたので,一部引用させていただきつつ紹介していきます。

イベント概要

今回のイベントも,サポーターズ主宰の特別講演会です。15:30から17:30の濃厚2時間。

会場は目黒駅ちかくの,株式会社ドリコムさん。400人弱が入るセミナースペースをなんと無料でご提供いただけるようです。もし勉強会等で場所に困っている人があれば,ここのフォームから申し込めるみたいです。無料でこんなに広い会場を貸していただけるなんて,信じられないですね。

さて,講演会のテーマは「若手エンジニアの生存戦略」。動きの激しいIT業界で,エンジニアが各自のキャリアをどう考えるか,という非常に私にとっても身近なテーマです。
日本で一番有名と言っても過言ではない,まつもとゆきひろ氏は果たしてどんなお話をしてくださるのか……!!


「生存戦略」とは言うけれど

講演のタイトルは「若手エンジニアの生存戦略」ですが,まぁ万人に当てはまる戦略なんてものは(幸か不幸か)存在しません。ということで,各個人の置かれた環境に合わせた「生存戦略」を立てるための「メタ戦略」を作るための講演,という立ち位置とのことでした。


ちなみに「スペランカー」とは迷宮の最下層を目指す主人公が非常に弱っちくて全然クリアできない,というある筋では有名な所謂クソゲー(たぶん。私もプレイしたことないので)です。「人生ハードモード」みたいな意味ですね。

さてじゃあ「死なない」ために何か必要なのか,というと,一言でいえば「パターン認識能力」です。
パターン認識,というと画像認識系の住民だけ反応するかもしれませんが,ここではもう少しメタな意味で,「過去の経験をパターン化して捉える」という意味です。

例えば「起業」を例に取ってみます。
Appleのスティーブジョブズも,Facebookのマークザッカーバーグも成功していますが,それをじゃあ今真似してみようとしても,そうはいかないわけです。
例えば生まれた国が違う。
例えば世界情勢(タイミング)が違う。
例えばデファクトスタンダードとなる技術が違う。
最初はどんなに些細な差異でも,プロダクトとして世にリリースする段階になれば無視できないほど大きな変化に変わっています。これを俗に「バタフライ効果」と言いまして,他にはタイムトラベル系のSFで,過去改変するとバタフライ効果で未来が大きく変わってしまう——のようなケースでも使われますね。

そんなわけで,いくら過去の偉大な業績を参考にしたところで,そのままは転用できないのです。必要なのは,その中から自分にも適用できそうなパターンを抽出するということ。
別にIQが高いから成功するとか,低いから成功できないとかいうのではなくて,物事を抽象化して把握する能力こそが,少なくともシリコンバレーでは求められるのだそうです。

社会は「我慢」を強いる

ところで,「プログラマの3大美徳」というものをご存じでしょうか。

Money Forward Developers Blog

こんにちは。エンジニアの廣瀬です。 業務では「MFクラウド経費」のiOSアプリの開発をしています。 マネーフォワードで最…

上のサイトから引用しますが,以下の3つの要素はプログラマたるもの絶対に持っておかねばならないものです。

  1. 怠慢 ( Laziness )
    • 全体の労力を減らすために手間を惜しまない気質。
  2. 短気 ( Impatience )
    • コンピューターが怠慢な時に感じる怒り。
  3. 傲慢 ( Hubris )
    • 神罰が下るほどの過剰な自尊心。

ぱっと見ネガティブな単語ばかりのように思えますが,これは「人間性」ではなくて「プログラマ」としての性根に関するものなのでご注意を。
今回着目したいのは1番の「怠慢」(もしくは「怠惰」)です。特に日本人はとかく「我慢」をしがちと言われます。「働く」ということに苦労・苦痛・我慢を含む場合,それは「勤勉」という単語のオブラートに包まれてしまいます。
今回まつもと氏が特に強調していたのが,以下の文面です。

強制される我慢は言ってみれば「社会的圧力」に他ならず,よくよく考えれば,それに屈する必要は無いんですよね。
会社との雇用関係は,

  1. 従業員:知識や経験を使ってバリューを提供する
  2. 会社:バリューの対価として報酬を支払う

であって,別に「我慢の対価=報酬」ではないんです。
まつもと氏が引き合いに出していたのは反抗期の子どもの例でしたが,反抗期の子どもはいくら親に反抗していても「親は自分を見捨てたりはしない」ということを了解しているからこそ,反抗という形で自己主張できるわけです。
一方,多くの会社員は「言うことを聞かないと(『我慢』をしないと)会社に捨てられる」「会社に捨てられたら路頭に迷う」という刷り込みを無意識に受けるわけです。特にIT系のエンジニアなら転職もスタンダードになっている今日この頃であっても,です。
そんな刷り込みを,平の従業員のみならず,その上司から(最悪の場合)社長までが総ぐるみで勘違いをしていると,典型的な「我慢」体質ができあがってしまう,という蟻地獄です。


その結果,組織は「(無意識の)秩序」を守ることに躍起になり,それが行きすぎると「理不尽」となります。特に「我慢」と「過労死」がやっかいなところは,人は我慢によって苦痛への耐性が付いてしまう,という点。
人間は痛みに対してですら鈍感になれる不幸な生き物ですが,残念ながらその「致死量」は変わらない,という残酷な現実がもたらすのが,最近話題の過労死というわけです。


例えば上司がどうしても「我慢」を強制するとき,エンジニアたる我々が取れる手段は2つあります。

  1. 上司の上司に文句を言う
  2. 会社を辞める

なかなか難しい選択ですが,自分を壊してしまったら元も子もありませんしね。

戦略は「空気を読まない」

そんなわけで,抑圧的な社会がもたらす「我慢」を甘んじて受けていると,エンジニアは「生存」できずに死んでしまいます(時には,文字通りの意味で)。
そのために心がけたいのが,「空気を読まない」こと。ここでの「空気」とは,上で述べた「組織は生産性よりも忍耐を大事にする」のような,本来の価値創造に直接結びつかない,暗黙的な抑圧を指します。
上述の通り,社会は無意識に目的を勘違いして「秩序維持」に代表される「仮の目的」を設定しがちです。これを漫然と享受せず,常に本質的な問題に注目して成果をあげよう,という金言です。
まつもと氏によれば,アメリカには以下のような格言があるそうです。


(目的を見失ったまま)Hardに働くな,(目的を明確にして)Smartに働け。
エンジニアに限らず,人生においても常に心の中心に置いておきたい良い言葉ですね。

「(社会・会社からの)理不尽に気付け」。まつもと氏は何度もくり返し仰っていました。

Win-Winを目指せ

上では,まず社会的圧力を自覚して,確固たる自己を持てという話をしました。
その上で,仕事をする際にはパートナーと同じ方向を向くことが必要です。
『7つの習慣』で,以下のような言葉があるそうです。

[amazonjs asin=”B00KFB5DJC” locale=”JP” title=”完訳 7つの習慣 人格主義の回復”] 片方がLoseとなるような取引はどこかで軋轢を生みがちであり,双方利益を受けられないのであればNo Deal=取引中止にするくらいの意気で仕事をするのが理想なのでしょう。
ただ例えばSI企業は「x人月」という単位を用いる業務形態上,必ずしも理想通りに物事は進められないというのが世知辛いところです。

思い込みを打破しよう

人間社会で恐ろしいのは「思い込み」です。人はあまりにも簡単に思い込むから,「詐欺」という単語は存在しているのです。

このようなプログラマらしい話があったかと思うと,こんな例もありました。

アウトプットで差別化しよう

人間の知的活動には大きく分けてインプットとアウトプットがあるのは周知の通りですが,インプットは誰でもやるので,真に注力するのはアウトプットです。
YouTuberの例がありましたが,「誰でもできる」ことを「(恥ずかしがらずに and 炎上を恐れず)やる」ということは重要です。
ブログを書くことも同様で,クオリティは棚上げしてでもアウトプットすることがきっと大事なんです。
(だから私もブログを書くのです! 炎上するかもしれないけど……。)

まとめ

以上,走り書きで恐縮ですが今日の講演会の一部でも共有できていれば幸いです。
まつもと氏の発言に対する誤解があったら申し訳ないです,その際はコメントいただけるとありがたいです。

講演の中のテーマすべてについて書けたわけではありませんので,他の方のまとめも参考にしてみてください(というか,私自身拝見してみて理解しきれなかった部分もあったなぁと反省しました。ブログ書いてくださる方に感謝!)。

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講演会自体は2時間でしたが,大変有意義な時間であっという間に終わってしまいました。
「エンジニアのための」と銘打ってはありますが,社会生活を送る人間として,幸せな人生を送るためのエッセンスが少なからず含まれていて,まさしく「メタ」な含蓄に刺激を多く受けることができました。

サポーターズさん,いつもありがとうございます!!