2018/12/31読了。今年を締めくくるに素晴らしい本を読めたことに感謝。
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京セラ,KDDIの創業,JAL再建などで平成の”経営の神様”といわれる稲盛和夫氏とiPS細胞を開発し,ノーベル賞を受賞した山中伸弥氏。異色の経歴の2人が語り尽くした,失敗を繰り返し掴んだ成功,部下の育て方,夢を見せる力,真のリーダーの条件とは。
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この本を買ったきっかけは何だったかなぁ。
確か,何かテレビで山中先生のドキュメントをやっていて,なんて素晴らしいんだと思って著書を検索したのだったか。
調べてみたら稲森さんとの対談集(本書)があり,これは買うしかないかな,と。
稲森さんの哲学・フィロソフィの神髄を稲森さん自身の声でしっかり聴きたかったのもある。というか私自身稲森さんに関係の深い会社の従業員であり,これは読まないと駄目だなと買ったのだった。書いてて思い出してきた,よかった。
私も新卒で入社してもうそろそろ2年が経つ。1年目を終え2年目で今の研究部署に来てから,自分の研究の立ち位置や今後のシナリオを考えざるを得ない機会が多くあった。
その時に悩んでにっちもさっちもいかなくなったのが「この研究は何のためにやるんだろう」という問いであり,未だにちゃんと答えが出ずに足掻いている。
この本を読んで,また各週末や年末中にも考えて,私なりの解答例は徐々に定まりつつあり,同時に新たな研究テーマに心を躍らせてはいるのだけど,それは書評とは関係ないので置いておく。
言いたいのは,この本は研究者たるものこうであれという力強いメッセージに溢れており,大いに背中を押されたということ。別に研究者じゃなくても,道なき道を行かんとするクリエイティブな仕事に励む人すべてに向けて有用と感じた本であった。
それが稲森さんのフィロソフィであり,山中先生のこれまでの道であったのだろうが,読んで想像余りあるにお二人とも壮絶な苦労をされている。逆を言えばここまでの苦難を乗り越えたお二人からの言葉だからこそ説得力を持つのだが,本書の主張は実に演繹的である。
タイトルこそ「辛抱強いバカになれ」だが,実は本文中でこんな言葉は出てこない(か,見逃した)。いくつか感銘を受けた言葉を列挙したい。
VW
(研究者として)人間に必要なのはVWである。VisionとWork hardだ。
私利私欲なく純粋に結晶化された願い(Vision)であればWork hardも辛くない。何度も挫折し,くじけても高い頂を目指すに必要な要素って,実は人間の根本的な熱意に依るのだろう。
稲森さんの,「動機善なりや,私心なかりしか」はあまりにも有名なフレーズである。私も2018年度に研究部門配属となり,1番の学びはVisionの大事さであった。幸いにもそれを体感する機会を二度三度と得,自問するチャンスが多々あったのは間違いなく幸いであっただろう。
楽観的に構想し,悲観的に計画し,楽観的に実行する
よく聞く「悲観的に計画し,楽観的に実行する」は,実は私が浪人生をやっていたときに一番大事にしていた言葉。(強迫観念気味でもあったが)悲観的に努力し,あとは運天任の心構えだった。
稲森さんの「楽観構想,悲観計画,楽観実行」はそれに加えて楽観的な構想を加えたものだ。一つ上で紹介したようなVisionは楽しく夢想する。目指すべき世界を見据え,己の中で活量を高めないと踏ん張りが利かなくなっちゃうんだろうな。
エンドレスの努力
高い頂を目指すのは,いつまでも努力をしたいから。なぜなら,お行儀よく見通しのよいところをゴールにしてしまうと,自己満足してしまう可能性があるから。これは非常に実感のある話で,私も今まさにこの状態に陥ってるなぁと焦りながらページをめくった箇所である。
また,ここはお二人の「リーダ論」にも密接に関係してくる。「エンドレスの努力」を,「高い頂」を部下に見せるのが上司の大事な能力だと言い切っている。
新卒2年目程度の私が言うのもおこがましいが,意識していないと丸くなってしまいそうで耳が痛い……。
まとめ
正直言って,この本を読むまでは稲森さんと山中先生にここまで共通する部分があるとは思っていなかった。だから期待はしていたが,とても気楽に読み始めた。
ところが,だ。
2人の共有する体験,夢,心構え,人間像はきっと一つの(完成に近い;がまだ余地のある)テンプレートなのだろう。「お前も中途半端な人生送るくらいならこれくらい目指せば? きっと楽しいぞ,大変だけど」と本(もしくはお二人)が語りかけてくるようであった。
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