読了『面白くて眠れなくなる社会学』

2018/08/12読了。
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修士まで機械学習の研究をしていた私であるが,企業研究者になってからはもう少し広い視点で研究すべしという思いと,好奇心と,身も蓋もないが所属部署の所掌という必要にかられて,行動経済学とか心理学とか,とかとかとかに触れる機会が増えてきた。
学生時代の興味(といっても学生の3年間なんて遊び同然だと思うが)をこういう分野でどう活かしていくか——ということは最近の常なる悩みなのだが,それはそれとして,全く未知の分野に踏み入るのだから,と本なり論文なりを継続的に読むようにしている。

というわけで最近購入した本が山のように積まれるばかりで全然消化が進まない。読んだとしてもブログ記事でも書かないと忘れるしモチベーションも上がらんと奮起して眠っていた本ブログを再起動させた。微々たる額だがレンタルサーバ代とかドメイン代だってタダではないのだから有効活用しなくては。
……こんな言い方をしてセルフ奮起を装っているが,例えば20年後にこのブログを見返すことを想像したとき,1つのライフログとして記録を取っておくことを醍醐味として考えているのが発破のその実9割以上を占めている実感がある。


書店にて,社会学の入門になる本はないかしらと探していたときに見つけた本。
本は通常中古で買うことが多いのだが,珍しくすぐに読みたくなったので新刊で買った。それなのに2週間くらい積んでた。何をしているんだか。さらに読み終わってから本記事を書くまでに1週間がすでに経過している。ほんと何をしているんだか。

閑話休題。

さて,この本の想定読者は恐らく中学生とか高校生とかであろう。前書きにも書いてあるが,著者は意識して平易な言葉を使っているし,扱っている内容も社会学における個別の領域についてではなくて,「社会学はこういうものだ」という大雑把な説明が大半を占める。
逆に言えば私のような初心者にとっては入門書として,大きな負担もなく読める内容であり適当だったに違いない。そんなわけで,「社会学ってどういうのなんかな?」という方はちょっと立ち読みをしてみるとよいかもしれない。
ただ,本書の目的上しょうがないことだが,決して内容が濃い本というわけではない。立ち読み以上の購入をすすめるのはちょっと難しいかな,というのが私の正直な印象である。

内容としては,先述の通り社会学の各分野を章分けして説明している。
目次としては以下のような感じ。

  • 言語
  • 戦争
  • 憲法
  • 貨幣
  • 資本主義
  • 私有財産
  • 家族
  • 結婚
  • 正義
  • 自由
  • 職業
  • 奴隷制とカースト制
  • 幸福

全部を説明するのも芸がないので,私が面白いと感じた章として「死」をピックアップする(他には「宗教」とか「幸福」の章が面白い)。

人は死ぬが,人は自分が死ぬ(であろう)ことに自覚的である。何故だろう。
祖父母が死に,知り合いが死に,恐らく年をとるとだいたい死ぬということが経験的にわかってくる。でも,「自分は死ぬ」ということは経験的な知識なのだろうか。
自分の死は観察できない。観察できないなら事実じゃないかもしれない。
そんなわけで「AさんもBさんも死んだけれど,自分は違う人間だし,死なないかも」なんて思う人がでてくるもんだから,中国の皇帝は不老不死の仙薬を探したし,イエス・キリストも復活することになっている。

あなたも「あと500年後には死んでるかなぁ」とは思うだろうけど,この駄文を読んでいるということは生きているということだから,それは間違いなく「経験的な知識」であるはずがない。だから,「死は超経験的な知識だ」と本書は言う。こういうメタな物言いって面白くて好きである。

また,死ぬと当然「この世界における自分の世界」はなくなるが,だからといっても人は大抵は自暴自棄な振る舞いなどせず,遺される人や周囲を考えながら逝く。その意味で死は人の存在を断つものではなくて,場合によっては新たな関係性を創造する営みでもある。
つまり死はクリエイティブだ,とか言われるとついオヨヨと感じてしまうが,なかなか面白い説明の仕方であった。

読書案内

本書末尾に,「読書案内」としていくつか社会学の本が紹介されている。いずれも,本書の著者が目利きした本であり,ある程度のフィルタとしては機能するだろうと思いいくつか買ってみた。
読んでみたらいずれこのブログで紹介するが,ひとまず頭出しのみ。
ただしいずれも例外なく分厚く既に頭を抱えてる。
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