2019/05/26読了。
200ページもないし,文も平易に書いてあるので1時間ちょっとくらいで読める(と言いつつ,出張中は結局読む時間がなくて後日読んだのだが)。
本書の立ち位置
著者の加藤綾子さんがアナウンサーで本のテーマが「会話」ということもあり,てっきり「会話術」的なものを想像して読み始めたのだが本書のメインは実のところそうではない。というのが一番の新鮮であった。
[aside type=”normal”]「はじめに」より「仕事とプライベートに役立つ『話し方』の本を作りたい」
出版社の方から,このご提案をいただいたとき最初はお断りしようと考えました。
まず,何よりも私自身の話し方がまだまだ未熟であり,日々学んでいる身だからです。自分が話し方について何かを語るのはおこがましいことのように感じました。
(中略)
私が認識違いをしていた点に気づきました。
それは,
「私が話し方について教える立場でなくても良い」
ということです。
[/aside]
つまり,加藤さんがアナウンサーという職業柄多く触れてきた「話のプロ」たちの特徴を,加藤さんなりの言葉でまとめた偉人伝のようなもの。確かにアナウンサーとは「伝える」のが仕事であるし,この視点は面白い。
印象に残ったもの
上記のような目的のある本なので,あまり体系だった説明はなく特徴を列挙している。その中でも,私が「おー!」と思ったものをピックアップしてみる。
- 自分の「失敗」を楽しく話せる人が愛される
- 自分の失敗談や苦労話で人を楽しませ,勇気づけられる人はカッコイイ
- 大勢の人の前で話すときは「リアクションが良い人」を見つける
- 発表の際の緊張をほぐす一つの手段として
- あなたは「言葉遣い」で判断されている(※後述)
- 気に入らないことも面白がる視点を持つ
- 嫌なことに直面するとどーしても不機嫌になってしまうのだが,相手も自分も幸せにならないので直したい。その一つの方法が「面白がる」という視点。そうすれば言葉遣いもきっと付いてくる。
- 「小さな冒険」をたくさんする
- 人間の面白いところはアドリブにある。「悲観的に準備し楽観的に実行する」という言葉に近いだろうか,経に楽しくエイヤで決めていく姿勢も人生を楽しむ秘訣と思う。
- 愛のあるツッコミを
- その場を和ませることにも繋がるが,場の雰囲気を変えられる人間に私はなりたい。
- これは私の直近の反省でもあるんだけど,場の雰囲気でとある特定の一人が気まずい思いをしているときにサッとその場を拭えるような冗談を打てる機転があると超絶カッコイイ。身近にそういうことができる人間もいるので,その人を参考にしながら身につけていきたいという思いは募るばかり。
「あなたは『言葉遣い』で判断されている」
ここは思うところ大だったので別に書く。これは常々感じることで,読みながらヘドバンさながらに頷いていた。
ポジティブ/ネガティブとかいうレベルよりも,「誰々を利用する」とか「誰々が使えない」とかそういうちょっとした表現とか言葉の綾に,ものすごく反感を覚えてしまう(と言いつつ矛盾するようだが「会社を利用する」という法人格表現にはある種の勇ましさすら覚えてしまうのだから,私は根っこからのヒラ社員なのかもしれない)。私もついつい酷い言葉遣いをしてしまうことがあるけど,反面教師にしつつ気をつけていきたい。
人は視覚からの情報が8割,とか尤もらしいことが囁かれるけれどもそれは単純な情報量の話であって,実際の人となりを知るには声の抑揚とか言葉遣いの方がより多くの情報を伝えているのではないかと思うことが多い。
だから人は顔の見えない相手でもその言葉遣いの美しさに恋をし得るし,遺伝子レベルの恋があるのならテキストレベルで人に好意を抱くのだって許されるよね,とか。だからこそマッチングアプリにおけるメッセージングというものは必要不可欠なのでは,なんてひどく偏った拡大解釈をしてしまうものだからいつまで経っても恋が成就しない。
心はどこに宿るのか,なんてエモい命題が頭に浮かんだけれど,言葉に実体があるのなら間違いなく心の宿り木であるだろう。
おわりに
例によって雑多にまとめてしまった感想文だけど,予想に反して結構共感できることも多い本だった。新しい知識を得た,というよりも,自分が漠然と感じていたことに対して背中を押してくれるような本。
人とのコミュニケーションをもっと楽しみたい人は,軽く読めるので立ち読みでもしてみてほしい。
翻って,本書のタイトルは『会話は,とぎれていい』。
会話は絶対に続けろ,といういわゆる「コミュニケーション術」を否定するかのような,素敵なタイトルと思う。
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