読了『天才を殺す凡人』

2019/07/14読了。普段お世話になってる人がこの本いいぞと薦めてくれたので(彼もよく本を読むのでちょくちょく本を紹介してもらっていてありがたい限り)。
今日本を読んでて随分懐かしい感じがするなと思ったらブログを書くの1ヶ月ぶりだった……。

なかなか挑戦的なタイトルには「天才」と「凡人」の2つの単語が登場するが,本書中には「秀才」を加えた3つの「人間タイプ」が語られる。
それらは三すくみの関係にも見えるが対等ではなく,非常に人間らしい機微を反映した相関関係を醸す。

「凡人」と「秀才」と「天才」

本書の語る3つのタイプはそれぞれ以下のよう。

  • 天才
    • 独創的な考えや着眼点を持ち,人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人。武器は「創造性」。
  • 秀才
    • 論理的に物事を考え,システムや数学,秩序を大事にし,堅実に物事を進められる人。武器は「再現性」。
  • 凡人
    • 感情やその場の空気を敏感に読み,相手の反応を予測しながら動ける人。武器は「共感性」。

ピラミッドにおける数としては当然,天才<秀才<凡人の順に数が多くなる。「凡人」というワーディングの破壊力はともかくとして,それぞれが持つ武器は順に創造性,再現性,共感性となる。

更に本書が面白いのは,彼らがタイプによりその評価軸を違えているという指摘。
凡人は「共感性」の人なので,より共感しやすい方に評価を付ける。例えば多数決なんてのもこちらの論理。
一方天才は「世の中に対する創造性」で語り,秀才は「論理」で再現性を示す。
軸が違うのだから同じ土俵で意見を戦わせることに意味はないのだけど,問題となるのは思考放棄気味に無理矢理に優劣を決めようとした場合。上にも書いた多数決は,数で圧倒的優位を誇る凡人にとっての,「天才を殺す」ナイフとも言える。

また,天才と秀才の間の関係も複雑だ。
本書では天才をアート,秀才をサイエンスで喩えているが,直感的にもわかるように,サイエンスの方が圧倒的に説明能力が高い。よくいう,KPIを設定してどうの……という話は,土台からしてサイエンス=秀才に有利な場の作り方であるということに衝撃を受けた。
タイトルにはないが,「秀才も天才を殺す」のだ。

では天才の軸を評価する方法はないのかというと,ある。ただし残念ながら直接観測できるものではなく,周囲からの「反発」から間接的に把握できる。
アーリーアダプターなどで有名なキャズム理論にも通じる考えで,「浅くて広い反発」と「深くて狭い支持」の割合が,例えば9:1くらいであればそれは大分にイノベーティブと言えるだろう。

相反する才能を有するアンバサダー

ヒトの分類は,大枠としては上記の通り,天才・秀才・凡人なのだが,世界は幸いなことに断絶はしていない。
天才タイプでもあり秀才でもある人,凡人だが天才への共感が強い人……,などの越境的な人物を,本書では「アンバサダー」としている。詳細は以下の通りである。

  • エリートスーパーマン
    • 天才と秀才の橋渡し。創造性もあり,再現性もある。つまり,クリエイティブでロジックも強い。一代で大企業を作り上げるような社長がわかりやすい。彼らは何よりビジネスが大好きで,常に研究者であり,挑戦者でもある。一方で,部下は彼らのスピードや思考についていけないこともある。したがって「外から見ると凄いが,部下につくと大変」であることも多い。
  • 最強の実行者
    • 秀才と凡人の橋渡し。再現性と,共感性を武器に持つ。つまり,ロジックも強くて,人の気持ちもわかる。まさにどの会社にもいる「エース」。学生時代から経に組織の中心にいて,就職活動も器用にこなし,生きたい会社に行く。営業と開発,正社員とアルバイト,本社部門と現場などをつなぐ。プロジェクトマネージャーとしても大活躍する。ただし,新しいことをやらせると「既存のサービス」の焼き直しになり,革新的なものは生まれないのが弱点。
  • 病める天才
    • 天才と凡人の橋渡し。創造性と,共感性を武器に持つ。クリエイティブなだけではなく,それが世の中の人々の心を動かすか? インサイトに届くかどうか? まで,直感的にわかる。自分らしさを表現しつつも,マーケットインの考え方もでき,プロダクトや事業などの責任者に就任すると,圧倒的なスピードでサービスを拡大できる。ただし,構造的に捉えることが苦手なため,他部署との調整や,組織の拡大,部下への権限委譲で失敗することが多い。

要するに

まぁいろいろとタイプがあるのだが,肝要なのは「自分がどのタイプなのか」,そして「達成したい目標があるときに,ヘルプを求めるタイプの人が誰なのか」を意識しておくことだ。
そうすれば,意図せずに「天才を殺す」こともないし,もしかしたら孤軍奮闘している天才を助けることができるかもしれない。

天才に対する憧れは誰にでもある。でも誰もがなれるわけじゃない。残酷なことに,持って生まれた才能というものは確実に存在する。でも幸いなことに,ヒトにはそれぞれ役割がある。
憧れるが故に貴重な「天才」を中心に,支え合うコミュニティができれば世界はもっと優しくなるだろうなぁ。