2020/01/03読了。
2020年,あけましておめでとうございます。
今年一発目の読書感想文はこの一冊。
2020年になったことだし,この読書レビューもまとめ方を変えてみる。基本的に章ごとにセクションを切って,ごくごく簡単にまとめていきたい。
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この本のメッセージを一言で言うと「社内起業しよう」という話だ。
はじめに:どんなふつうのサラリーマンも,必ず「社内起業家」になれる
「新規事業開発」をすべき理由がある。
少し極端な表現になりますが,企業の中にあるほぼすべての仕事はそれがどんなに花形の仕事であったとしても,「定年後には確実に価値がなくなる仕事」です。つまり,「企業の未来のための仕事ではあっても,働く1人ひとりの未来にはつながらない仕事」なのです。
でも,新規事業開発という仕事だけは,唯一企業の未来と働く個人の未来が一致する仕事。身につけたスキルを定年後にも活かすことができる仕事です。100年生きる時代だからこそ,すべてのサラリーマンのみなさんに,自分自身の老後のために新規事業に取り組んでみてほしいのです。
ぶっちゃけてしまうと最近の私の悩みもまさにこれで,自分の「強み」をどの領域に持つのがいいのか,もしくはいくつの領域を掛け持ちして強みにしようか,と考えあぐねている。
生意気な言い方かもしれないが,強みポートフォリオの中の1つとして,本書で扱う「新規事業開発」のスキルを持つべきだと強く感じた。
日本人は企業より「社内企業」が向いている
米国,中国のイノベーションが著しく,反して日本はまるで消沈しているようだ。高度成長時代は夢の跡,年功序列と終身雇用は崩壊し始めた……,そんな悲観的な論評が多い。
そんな日本では「起業」よりも「社内起業」の方が向いていると麻生さんは言う。
中国のような政府主導で経済を回すのは,資本経済の日本では難しい。逆に,米国のようなスタートアップが日本で盛んにならない背景には構造的な理由がある。それは労働者が「守られすぎていること」。終身雇用が終わりかけているとは言え,簡単に従業員を解雇できない日本の仕組み上,サラリーマンは会社を辞めてまで起業しないのが実態だ。
ただしこれは考えようによっては逆の解釈もできて,労働者は「どれだけ失敗しても生活が揺らぐことはない」とも言える。その安定感こそを武器に,「社内起業」を促進する社会デザインを作ろう,というのが本書の趣旨。
日本における大企業の影響力足るや,良くも悪くも凄まじい。結局新しいテクノロジーやビジネスを社会実装しようとしたときに,一番強いのは(少なくとも日本においては)大企業なのだ。
であれば,日本におけるイノベーションの中心は大企業のサラリーマンであるだろう,と。
「社内起業家」へと覚醒するWILL(意志)のつくり方
起業でも社内起業でも,何よりまず大事になるのは意志。それを本書では3つに整理している(これらを備えて覚醒することを「原体験化」と呼んでいる)。
- 取り組む領域の明確さ:「Q1・誰の」「Q2・どんな課題を」
- 使命感・圧倒的当事者意識:「Q3:なぜあなたが」
しかしこれらを最初から熱量を持っている人はそんなに多くない。でも,これらは醸成できる。
大事なのは以下の2つの行動だ。
- ゲンバに触れ,深く対話する。
- 「ゲンバ」とは課題の根深い現場のこと。大きくは東日本大震災,介護,障害者雇用,子育て……それこそ世の中はまだ課題に溢れている。それを,賢しくも見て見ぬふりをしている現状を打破すべく,ゲンバへ向かい,1人の人間として課題と直面する。
- ホンバを訪れ,刺激を受ける。
- 新規事業開発の最前線の空気を吸うこと。社内のそういう部署を覗くもいいし,副業でベンチャーを手伝うもよし。
これらを往復することで,原体験化できればしめたもの。自分の中のからのコップが段々と満たされていくような感じを味わえる。
最初にして最大の課題「創業メンバーの選び方」
多すぎるとコミュニケーションコストが膨大になり,進むものも進まなくなる。
チームに必要な力を下記の3つに大別して,それをうまく満たせるようにできるだけ3人以下で構成できるとよい。
- Network:異分野をつなぎ,ネットワークする力。
- 必要なのは,自分とは異なる異分野・異業種の人たちとゼロから人間関係を構築する力。
- Execution:実行し,やりきる力。
- ビジョンと事業アイデアを,「あらゆる細かな作業」と「局地戦での勝利」を通じて実現する力。
- Knowledge:知識と教養。
- 無知の知。すぐには役立たないかもしれないが本質的な学問や,未来を予測する技術やトレンドを学び続ける力。
立ち上げ前に必ず知るべき新規事業「6つのステージ」
- WILL(誕生):おぼろげでも取り組みたい顧客課題を見つけ,そこへのWILLの形成を目指す段階
- 昇格条件:WILLが強いか,強まりそうか/走り抜けるチームかどうか
- ENTRY期:魅力的で検証可能な事業仮設の提示を目指す段階
- 昇格条件:顧客・課題・ソリューション仮説・検証方法のセットが成立しそうか
- MVP期:事業性を伴った魅力的な事業計画の提示を目指す段階
- 昇格条件:仮説が実証されているか/投資可能な事業計画か
- SEED期:商用レベルでの事業の成立とグロースドライバーの発見を目指す段階
- 昇格条件:実際に商売が成立したか/成長のための拡大方法が見えたか
- ALPHA期:実際にビジネスが最初のグロースを実現することを目指す段階
- 昇格条件:事業が成長状態に入ったか/組織戦略と対競合戦略が現実的か
- BETA期:経営会議で議論できる最小限の規模に到達し,かつ成長状態であることを目指す段階
- 昇格条件:成長率を落とさず成長状態が続くか/既存事業と遜色ないガバナンスか
- EXIT期:新規事業の枠組みを卒業し,成長投資を獲得し,企業戦略の一部に組み込まれることを目指す段階
- 昇格条件:社内での位置づけ整理・IR方針/既存事業を凌駕する規模への投資戦略
- Company(卒業):既存事業と呼ばれる段階
それぞれにステージはあるが,大事なのは「ステージによって評価基準も変わる」ということ。例えばENTRY期に「それって市場規模ちいさくない?」という指摘はナンセンス,ということだ。
新規事業の立ち上げ方(ENTRY期〜MVP期)
何よりも「顧客起点」が大事。アイデアでもビジネスモデルでも,技術ですらなく,「顧客」を中心に据えて進められるかどうかがすべての岐路だという。
それを端的に表現する言葉が「300回顧客のところへ行け」。
仮説を立てて,それを顧客のところに持っていってワークするかを確認する。このサイクルを数多くこなすことこそが新規事業開発の成功の秘訣だという。
ちなみに,MVPとはMinimum Variable Product。仮説を具現化した最小限のプロトタイプを指す。
新規事業の立ち上げ方(SEED期)
大事になる指標が2つある。
- CAC=Customer Acquisition Cost(いち顧客あたり獲得単価)
- LTV=Life Time Value(いち顧客あたり生涯利益)
本格的に事業化する際にはLTV>CACにしなければいけないが,SEED期では達成できるのは稀である。
それよりも,Primary Customer Successを目指すこと。つまり,最初の顧客が新製品で課題解決できるかどうかをとことん追い求めるべき,ということ。
いわば仮説の,実フィールドでの初めての検証である。
「社内会議という魔物」を攻略する
社内の会議とは「決裁した人が,その決裁理由を自身の上司に説明できるようになること」が一つの目標となっている会議体である。
だからこそ「重箱の隅をつつく」ような質問も来るかもしれないが,しっかりと準備周到にして臨みたい。
経営陣がするべきこと,してはいけないこと
前章までとは違って,この章は経営陣に対する提言である。
まとめると,このようなことを言っている。どれも,新規事業開発の社内的な障害となる可能性のあるらしい。
- 「画期的なアイデア」は「顧客」しか真の意味で理解できないのだから,社内で画期的かどうかの判断をしないでください。
- 決裁権を委譲してください。
「社内起業家」として生きるということ
著者・麻生さんのエピソードを紹介する章。
意外なことに「顧客視点なんてはじめは持っていなかった」ということで試行錯誤を重ねてきたらしい。
この本の存在が,後に続く者にとってどれだけありがたいものになるだろうか知れない。
感想
いままで抽象的に捉えていた「新規事業開発」というものの考え方を知れた。非常に参考になる本で,納得感も申し分ない。あとは自分で実際に挑戦して,体験を持って確固たるものにしていくことだけだ。
ちなみに,本章は”NewsPicksパブリッシング”というレーベルの本なのだが,オンライン読書会も併設される。この本の開催日は,来る2020/01/16(木)の20時から。
参加したら何か世界が変わるかもしれない,と期待して申し込んでみた。
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