読了『楽園のカンヴァス』

2020/06/01読了。

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ネットで仲良くなった人と「最近面白い本ないですか」的な話になり,この小説を勧めてもらった。
原田マハの作品は初めてだったのでどういうジャンルのものなのかすら知らなかったが,一言で言うと「美術ミステリー」。

本作はルソーにまつわる絵と,それを取り巻く謎がテーマ。あと書きにもあるが,美術史とミステリーは本来的に相性がよい。
「美術ミステリー」と聞いて,最初は時代小説と似たようなものかと思ったのだが,美術ミステリーは本来の史実に多少の創作を加え,登場人物を「史実」の代弁者=読者としながらも徐々に創作の世界への伝道者の役割も果たすという構図。それゆえに史実と創作,ミステリーの垣根が曖昧になり,没入感が出るのだと思う。そういう意味では,ただの時代小説よりもタイムリープ系の時代小説に近いものがあるかもしれない。

実は小説を読んだのは久しぶりだったのだが,思わず熱中して一気に読んでしまった。おすすめ!

あらすじ

ニューヨーク近代美術館のキュレーター,ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵の譲ると告げ,手掛かりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。
ルソーとピカソ,二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは——。山本周五郎賞受賞作。

感想(ネタバレ含む)

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冒頭の,いかにも日常的な描写は割に退屈(今思えば全部つながった話になっているし,爽やかな読後感のためには必要不可欠なものなのだが)。
しかしその分,中盤以降のストーリーの勢いは素晴らしく,読んでいて一瞬も飽きることがない。エンディングの閉じ方も上品。

続きを読みたいなと思いつつも,この本はここで終わるからこそ価値があるとも思わざるを得ない,なんともやきもきさせてくれる話だった(全部ほめ言葉)。

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