読了『嫌われる勇気』

2020/07/05読了。

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「あとがき」で共著者の一人である古賀が言う通り,まさにコペルニクス的転回だ。
一見し,ややもすると「精神論」とか「独善的」と唾棄されかねないような主張ながら,読み進めるとその秩序ある論理展開に息を飲む。

感想(Rating:5/5)

この本で主張するアドラー心理学ーー「勇気の心理学」ーーはとてもシンプルだ。状況において複雑に変化するいくつかの仮説(そしてそれは本質的に「例外」である)を伴わず,基本となる「考え方」をいくつか導入することで「人生」を説く。
曰く,過去の原因ではなくいまの「目的」を考える,すべての悩みは対人関係に帰着する,「人生のタスク」から逃げず貢献感を得ること,「課題の分離」と相入れぬ承認欲求は捨てよ,etc。

核となるアイデアと,それを一直線に結ぶようにアドラー心理学を対話形式で説明してくれる本書。
読みやすく,なおかつ読者の疑問を先回りしたかのような対話展開が秀逸で理解もしやすい。
いつも傍に置いておきたい本。いつの日かこの本に救われた,と言う気がする。

帯にある「大切な人に贈りたい本」というのも納得だ。

目次

  1. トラウマを否定せよ
  2. すべての悩みは対人関係
  3. 他者の課題を切り捨てる
  4. 世界の中心はどこにあるか
  5. 「いま,ここ」を真剣に生きる

引用

p26

過去の原因にばかり目を向け,原因だけで物事を説明しようとすると,話はおのずと「決定論」に行き着きます。

p30

われわれは過去の経験に「どのような意味を与えるか」によって,自らの生を決定している。

p55

時間さえあればできる,環境さえ整えば書ける。自分にはその才能があるのだ,という可能性の中に生きていたいのです。

p71

アドラーは「人間の悩みは,すべて対人関係の悩みである」とまで断言しているのですから。

p80

これと対をなすのが劣等感です。人は誰しも,優越性の追求という「向上したいと思う状況」にいる。なんらかの理想や目標を掲げ,そこに向かって前進している。しかし理想に到達できていない自分に対し,まるで劣っているかのような感覚を抱く。

p82

一方の劣等感コンプレックスとは,自らの劣等感をある種の言い訳に使いはじめた状態のことを指します。

p92

「優越性の追求」とは,自らの足を一歩前に踏み出す意思であって,他者よりも上を目指さんとする競争の意思ではありません。

p109

アドラー心理学では,人間の行動面と心理面のあり方について,かなりはっきりとした目標を掲げています。まず行動面の目標は「自立すること」と「社会と調和して暮らせること」の2つ。そしてこの行動を支える心理面の目標が「わたしには能力がある」という意識,それから「人々はわたしの仲間である」とうい意識です。

p115

アドラー心理学とは,他者を変えるための心理学ではなく,自分が変わるための心理学です。

p120

アドラーは,さまざまな口実を設けて人生のタスクを回避しようとする事態を指して「人生の嘘」と呼びました。

p133

「あの人」の期待を満たすために生きてはいけない

p140

われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から,自分の課題と他者の課題とを分離していく必要があるのです。

p159

課題を分離することは,自己中心的になることではありません。むしろ他者の課題に介入することこそ,自己中心的な発想なのです。

p185

そして,自分の人生における主人公は「わたし」である。ここまでの認識に問題はありません。しかし「わたし」は,世界の中心に君臨しているのではない。「わたし」は人生の主人公でありながら,あくまでも共同体の一員であり,全体の一部なのです。

p254

貢献感を得るための手段が「他者から承認されること」になってしまうと,結局は他者の望みどおりの人生を歩まざるをえません。承認欲求を通じて得られた貢献感には,自由がない。われわれは自由を選びながら,なおかつ幸福をめざす存在なのです。

p266

人生とは,いまこの瞬間をくるくるとダンスするように生きる,連続する刹那なのです。そしてふと周りを見渡したときに「こんなところまで来ていたのか」と気づかされる。

p267

あなたのおっしゃる,目的地に到達せんとする人生は「キーネーシス的(動的)な人生」ということができます。それに対して,わたしの語るダンスを踊るような人生は「エネルゲイア的(現実活動態的)な人生」といえるでしょう。

p270

「いま,ここ」に強烈なスポットライトを当てよ

p271

人生全体にうすらぼんやりとした光を当てているからこそ,過去や未来が見えてしまう。いや,見えるような気がしてしまう。しかし,もしも「いま,ここ」に強烈なスポットライトを当てていたら,過去も未来も見えなくなるでしょう。

p272

たしかに,人生を物語に見立てることはおもしろい作業でしょう。ところが,物語の先には「ぼんやりとしたこれから」が見えてしまいます。しかも,その物語に沿った生を送ろうとするのです。わたしの人生はこうだから,そのとおりに生きる以外にない,悪いのはわたしではなく,過去であり環境なのだと。ここで持ち出される過去は,まさしく免罪符であり,人生の嘘に他なりません。

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