読了『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜』

2019/03/30読了。

もうあっという間に年度末。
2月下旬〜3月から遂に1人暮らしを始め,その前後のバタバタもあり,毎週末の楽しみにしていた読書とブログの更新もすっかりご無沙汰していた。
実家にいるときは午前中にファミレスで読むというスタイルだったが,家具含め自分でフルアレンジした居心地のいい家で午睡混じりにページを繰り気付けば夕暮れを迎える,というのも人間性と年度末の飲み会で酒浸しになった身体に優しい。


最近「コミュニティとは?」と考える機会が多く,また社内の有志コミュニティに関わらせてもらうことも増えたので,とても熱中して読んだ。
そもそもこのタイトルがAmazonで目に留まったのは,私が好きな『宇宙兄弟』作中のセリフだったからという単純な理由だったが,扱っている内容自体も非常に興味深い。

インターネットが拡散し「個」が際立つ世情とそこで発生する「孤独」という弊害を,もはや広く「現代病」として捉え,その解決策として「コミュニティ」を上げる本書。

[aside type=”normal”]はじめに

孤独を感じたことがない人はいないだろう。これだけたくさんの人が周りにいるのに,誰もが孤独を感じている。
<中略>
世の中を見ると,人と人は,SNSでどんどんつながるようになっている。知り合いが増えて,やりとりも増えて,情報交換は忙しくなっている。でも,つながりあっているのに孤独は増している,そんな不思議な状況が社会では生まれている。
<中略>
『宇宙兄弟』の中にこんなセリフがある。
「We are lonely, but not alone.」
このセリフは,宇宙で一人漂う宇宙飛行士が発するものだ。しかし,たくさんの人間に囲まれていても,lonelyにはなる。どうすれば,not aloneになれるのか,コミュニティについて考えながら,探りたいと思う。
[/aside]

読みながら頷きすぎて首が痛い。

なぜ人は孤独か

考える上でキーワードとなるのが,「安心」と「自由」の2つ。社会的な存在である人間はこの2つを求め,しかし2つを同時には得られなかったというトレードオフに悩む。

古来,ムラ社会では自由はないが圧倒的な安心感があった。憚らない言い方をすれば,「奴隷の幸福」と同じく,人には予め役割が与えられていたから。
それが,高度成長で人は「ムラ」を捨て,「核家族」と「会社」というコミュニティに属した。自由が増した分,自分の役割を担保する仕組みが失われ,それゆえに「終身雇用」は機能した。

そして現在。人はコミュニティを失いつつある。晩婚,未婚化(私も><)に加えて,会社も制度として機能を失いつつある。
自由を求めた結果,安心を失ってしまったとも言える。

では特効薬はあるのか。
本書は,そのヒントとして「コミュニティ」に期待を寄せ,なめらかなインターネット社会に希望を見出す。

「なめらかな」コミュニティとは

インターネットがすべてを解決する,と思うのは短絡的だ。
既存のSNSは極めてオープンで,心理的安全性が確保できない。FacebookやInstagramを開けば,自分以外の人間ばかり幸福に生きているかのような錯覚を生む。これらのシステムは必然的に嫉妬を生み,現代人の中にひずみを蓄積してしまうという弊害があった。
やはり,オンラインのコミュニティにも,リアルなコミュニティと同様の身体性を持たせて「クローズさ」がないと始まらない。

なめらか,とは言い換えれば「自然」ということ。
結局,オンラインコミュニティは未だ不完全なままであり,そのアップデートをしていかないと「安心」と「自由」は得られず,「孤独」は癒やされないよ。
と,私がまとめてしまうのは些か短絡的だろうか。

「持続可能な」コミュニティとは

もう少し話を進めると,コミュニティ自身が自走できる仕組みがあれば一番良い。
最近はホリエモンや箕輪さん,この本の著者の佐渡島さんらに代表されるように,それぞれがオンラインサロンを主催しており,参加者自身がお金を払って「働く」という仕組みが多くなってきた。しかし,その「働く」が給与の対価としての「労働」であれば,コミュニティは成立しない。参加者が楽しいと思えるものに熱狂し,その熱がさらに周囲を巻き込むような正の循環を起こせるコミュニティの形が一体何なのか。「働く」の実感とも非常に近い話。

きっと明確な答えはないのだが,たぶん大まかな答えはあるのだろう。それを突き詰めた人が新しいビジネスの形を興し,世界はきっと夢中になるのだ。
安心を感じながら人と繋がり「続ける」ことで,孤独は癒やされるのだから。

おわりに

この本のおかげで私の週末が一気に華やいだ,と思ってしまうほど素晴らしい本。

本書の後半は新しいコミュニティの立ち上げやコミュニティ運営のノウハウなどの側面も強く,私の会社活動においてもとても参考になる部分が多い。もう一度言うが,とても良い本だった。さすがNewspicks Book。

常々思うことだが,社会が段々と「個人」を重視するようになってきて,(当然ながら)個人の持つ資質によって個人の人生が決まるようになってきたと感じる。
それはそれで不可避の流れなのだが,個人主義の世の中ですべてを「リテラシー」とか「自己責任」で片付けるのではなく,もう少し人間味(?)を持って「個人」をサポートできる社会実装があればいいのに,と思う。

そんな素晴らしい世界が来ないかな,作れないかな。