すこぶる評判の良いパシフィック・リム。芦田愛菜ちゃんがハリウッドに出演したってんで,一時すごい話題になったよね。それ,これです。ぶっちゃけ観る前には,ただロボット映画,としか認識してなかった。パシフィック,とあるから海関係なんだろう,とも。まさか,怪獣映画だとは思わなかった。というのも,どうやら,このハリウッド映画は日本の「怪獣映画」「ロボット映画」に対するオマージュを多分に含んでいるらしい。作中(字幕)でも英語で”KAIJU”と言っているしね。
ハリウッドサイズで怪獣ロボット映画をやるとこうなる……らしいのだが,なんともスケールのでかい話だ。
あらすじ
2013年8月,太平洋の深海の裂け目から突如KAIJUが現れ,3つの都市を破壊した。人類は次々に現れるKAIJUに対抗するため,人型巨大兵器「イェーガー」を開発する。イェーガーは,2人のパイロットの心がシンクロしたときにその能力を発揮する巨大ロボットだ。2025年,かつてKAIJUとの戦いで兄を失ったローリーは,最後の決戦のパイロットとして呼び出される。香港の基地に着いたローリーは,日本人研究者のマコ・モリとコンビを組み戦線に復帰するが,2体のKAIJUが街に迫っていた。WARNER BROS.ENTERTAINMENT・監督:ギレルモ・デル・トロ 主演:チャーリー・ハナム/イドリス・エルバほか
感想:★★★★★
もうね,これ,文句なしの傑作っす。手放しで,映画館で観て良かったって思った。惜しむらくは,観賞代をけちって2Dで観てしまったこと。IMAX3Dで観たらもっと弩迫力だったんだろうなあ……と思わずにはいられないほどの良作だった。いや,傑作。
しかし,ストーリーにそこまで特筆すべき点はない。よくある地球外生命体の侵攻に対して人類が撃退に成功する……という,SF王道のパターン。深い人間的ドラマがあるわけでもなく,純粋にバトルシーンばかりが目に付くのだが,これがかえって良いのだ。
2時間半という限られた時間の中で,あちこちに手を伸ばしすぎて駄作に陥ってしまうケースは多い。必要以上に批判的に観てしまえば,「何故そうなるのか?」と浮かんだ疑問に対する答えが作中で得られることは少ないし,もしくは矛盾を孕んでいることも多い。まあ,それは時間と盛り上がりのための犠牲なんだろうけども。
昔,「ご都合主義」という言葉の定義に関して,随分と腑に落ちる説明を読んだことがある。どんな映画も,小説も,それが物語である以上主人公にとって,いやむしろストーリーにとって「都合のいい」展開になるのは避けられない必然なのだが,それが余り余ってしまうと「ご都合主義」との批判を許す。なら,どこでその線引きがなされるのか? というその答えは,「作中の人物すべてが,その時々にできる最高のパフォーマンスをした」と読者に思わせられればそれはご都合主義になり得ない――というものだ。端的に言えば,主人公サイドだけじゃなくて悪役(?)も努力している様を見せつけておけばいいのだ。
ご都合主義論の是非はともかくとして,むやみやたらと策を弄し,主人公がかけずりまわり,「運がいいことに」何かことを為せる,というのが創作物だと多いのだ。そしてそれは,その要素が偏に中途半端であるから起こる。
話は戻って,『パシフィック・リム』は中途半端なところがない。ストーリーは腕力勝負。権力も策略もない。恋愛的絡み合いもない。極論してしまえば,敵となるKAIJUは知性があるようには描かれておらず,結果として相手の「努力」が存在する余地はない。完全に人間側に寄り切ったストーリーだからね。
そんなわけで,単純明快に楽しめるエンターテインメントとして,この作品は傑作と呼ぶに相応しい。ストーリー性がない,ということをまさか評価することになるとは思わなかった!
あくまで付加価値として,ロボット映画であることも個人的に万々歳(どうでもいいけど,私の大学の学科はロボット学科であります。ヒューマノイド最高)。あんまり「怪獣映画」は観た覚えがないんだけど,グロテスクなエイリアン映画なら結構観た。『カウボーイ&エイリアン』という映画を思い出す。エイリアンの牙とかそっくりだよね。
最後に芦田愛菜ちゃん。ハリウッドでるなんてすごいよねえ。月並みな言葉だけど。以前,監督のインタビューをテレビで観て,愛菜ちゃんが絶賛されてたのを思い出す。ぶっちゃけ,演技が上手いとか下手とかよくわからないんだけど,鬼気迫る迫真の演技であったことはよく伝わってきた。単なる「子役」としてテレビを通してみるとどうしても批判的になってしまう私がいるけれど,こういう舞台になると不思議と応援したくなる。単に,私が日本のバラエティ番組嫌いが過ぎるのかしら。
さて,長々と書いてきたけれども,お勧めです!! 観るときは是非多少高くっても3Dで観るといいですよーっ。
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