映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

  • 2017-01-03
  • 2017-03-25
  • 映画

下記,ネタバレ無しなのでご安心ください。

これは原作小説から読むべき映画

観ました。
この本を初めて読んだのは約1年と半年前。映画化されると聴いて,1年くらい前からすごく楽しみにしていた作品でした。結構巷でも認知されている映画のようで,周りでもちょくちょく「観たい」との声を聴いています。

ただ,個人的にはこの作品は原作の小説から読んで欲しい

原作を読まずに楽しめる映画もたくさんありますが,この小説のようにストーリーで魅せるタイプのお話は,文字だけからの方が絶対に楽しめます。

その最大の理由は,映画の「予告編」。映画の広告に必須の予告映像は,よほど確固たる狙いがない限り,ほぼ必ず禁忌とも言える「ネタバレ」を含みます。

そして,それはこの『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』でも例外ではありませんでした。
「予告編」と言いつつ,おおよそダイジェストのような構成です。

さらに,この記事中にはあえて映画公式サイトのリンクを張っていませんが,トップページにデカデカと(見ようによってはネタバレを含む)煽り文が書かれてしまっています。キャッチコピー自体は小説にだってあるものですが,映画版になると大抵の場合,「無駄に(必要以上に)」情報を与えるタイプの煽り文が多くて切なくなります。
ただ,とても残念,と思うと同時に,(小説に比べて多額の制作資金をかけている以上)販売戦略上しょうがないことかな,とも思います。

そもそも映像はメディアとして,言わば受動的な娯楽です。あくまで,ストーリーを,綺麗な絵や巧みな映像描写で彩るもの。圧倒的吾没入感を伴って,視覚・聴覚的に楽しむものです。
そこに,ストーリーとしての意外性・感動を求めるのはちょっとお門違いな気すらしてきます。

誰が言ったか,人は忘れる動物ですが,残念なことに人は都合のいいように物事を忘れることはできません。
一度知ってしまったストーリーを綺麗さっぱり忘れ,まっさらな状態からもう一度話に涙することはできません。
回数を重ねて深い考察をすることはできても,感情的な情報量としてのピークは,どうしたって一発目には敵いません。

だからこそ,最初にその作品に触れることになるメディアが小説であるべきなのか,映画やアニメなどの映像作品であるべきなのか,というのはとても大きな問題です。

見極めて「原作厨」になる

そんなわけで,私は映画やアニメを観るとき,「何を一番に楽しみたいのか」を決めるようにしています。

例えばストーリーなのか,描写なのか,音楽なのか。

何よりもストーリーを楽しみたいのであれば,時間が許す限り原作を読んでから映画を観るようにします。その上で,原作をどのように映像として表現したのか,その差異を映画の「キモ」として楽しみます。マルチメディアの一番純粋な楽しみ方だと思います。

一番求めるものがアクションだったり,俳優女優の演技だったり,綺麗な絵だったりする場合は大人しく映画から観て,気になれば原作も読みます。映画で語られなかった部分が,原作ではどう書かれているのだろう,というのが楽しみになります。

原作小説を読むのはどうしたって時間がかかるので,気になる全部の作品を原作から読んでいくわけにはいきません。
これは文字から読みたいもの,これは映像で短い時間で雰囲気を知ってから面白そうであれば読みたいもの,と直感で仕分けていくことになります。

そういった意味で,私はストーリーに関してのみ「原作小説厨」であろうとしています。

ただ私の中で「オリジナルアニメの映画」だけは特別で,この場合は小説よりも先に映像作品を観ることが多いです。というのも,この原作は映像作品自身であり,後づけで小説が「原作小説」の名の下に作られることが多いからです。ジブリ映画や『バケモノの子』『君の名は。』しかり,いわゆる「オリジナルアニメの映画」は映画から観た方が,ストーリー・映像ともに楽しめると思っています。

……脱線しました。
話を元に戻すと,「ストーリーを楽しみたいものは原作小説から読むべき」ということでした。

しかし,意外と「何よりもストーリーを楽しみたい」映画というのは巡り会えません。
そりゃあそうです,映画の中心は映像であってストーリーではないのですから。語弊を恐れず言えば,ストーリーは「良ければなお良し」なのです。

だからこそ,真の意味でストーリーが面白い小説が原作の映画というのは貴重なんです。
今回観てきた『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』も,原作小説は素晴らしい作品です。そして,正直に言えば,映画版も小説の意図を汲んだ素敵な描写が随所にあり,小説の映画化としては大成功だったと思います(返す返すも,予告編が「ダイジェスト」であること以外は)。

それだけに,この映画は是非原作の小説から読んで欲しい。
原作小説を一度や二度読み直して,改めて映像という圧倒的な情報量と共に,原作との細かな違いを映画制作陣の解釈の試みとして感じて欲しい。

映画だけを観て,「面白かったねー!!」だけで済ませるには余りにももったいない。
創作物に対する感動は,一番純粋なおおもとの形で(多くの場合は原作小説という形で)一気呵成に受け止めて,感情を振り切るべきです。

そんなことを,この映画を観て感じました。

原作小説のすすめ

最後に,原作小説のリンクを張っておきます。大抵の書店には置いてあるでしょうから,Amazonで買うよりもそちらの方が楽かもしれません。
[amazonjs asin=”4800226104″ locale=”JP” title=”ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)”]

もし今から原作を読んで,それから映画を観ようという方。
間違っても,予告編は見ないこと。
他の映画を観たときに予告編が流れても,『ぼくあす』に間は耳目を閉ざしてシャットアウトを心がけること。
そこまでする価値が,この小説にはあると思います。
願わくは,小説・映画ともにあなたが存分に楽しめますように。

改めて,作者・制作陣の方,素晴らしい作品をどうもありがとうございます。