2020/03/28読了。
以前読んだ『遅いインターネット』のその批評の鋭さに感動した宇野さんの,『遅いインターネット』以前の本。
石破さんとの対談ということで,どんな激論が展開されるのかな,と楽しみに本を開いた。
感想
お題はタイトルのまま,日本をどうするか? というもの。特に石破さんの考える3つの切り口,「自由」と「開国」,「国民主権の再設定」に注目して議論される。
昨今よく議題にあがる集団的自衛権とか憲法改正にも通じる話が多く,主張の裏の背景を知られるという意味でもこの本は面白い。
ただ,この本の出版は2012年,東日本大震災の直後の話である。それから約8年……。政局と,日本の現状はあまり変化していないように見える。そのことが残念だ。
その8年を経て上梓された『遅いインターネット』,宇野さんがこの国に感じたことは何だったのだろう,と少し考えたりした。
目次
- 新しいこの国のかたち
- 夢の車,夢の日本——「若者が乗りたい車」を作ろう——
- 「〜ではない」国から「〜である国」へ——三度目の「改造計画」
- それは「甘い夢」である必要はない——国民に「嘘をつかない」政治へ
- 持続可能な国家のために——若者を「金持ち」にしよう!
- 新しい日本への「三つの柱」<自由化><開国><国民主権の再設定>
- 明日の社会を提案しよう
- 非正規雇用の両親が二人の子どもを育てられる社会をつくるために
- 「若者が安心できる社会保障」に切り替えるには
- スマート・ガバメントの実現で「メリハリのある福祉」を!
- 新卒採用での雇用調整は撤廃すべし
- 男性を企業社会から解放せよ
- 女性の「生きづらさ」を社会がフォローせよ
- 独禁法改正も視野に入れた企業統合で,デフレからの脱却を
- 「競争する農協」で,国際市場で戦える農村都市を
- 「開国」で,日本という枠組みを問いただす
- 「方法としての道州制」で,自立した地方経営を
- 「元通り」ではなく,新しい「復興」のために
- 長期的なクリーンエネルギーへの移行のためには,何が必要か
- 本当に「機能する」防衛と日米関係のために
- こうすれば憲法はアップデートすることができる
- 歴史は「物語」ではない/歴史に<if>はあっていい
- 利他性を育む教育は可能か
- こうすれば,日本は変えられる
- こんな<政治>を実現したい
- インターネットは政治を変えるか
- ポスト・コイズミ症候群を打破せよ!
引用
p3
どちらのマニフェストも幕の内弁当のようなもので,せいぜい副業がコロッケかカキフライかの違いしかない。
p23
私は自分でできる範囲のことでもイージーに公に頼ってしまう社会は,結局弱者に冷たく,強者に優しい社会になってしまうと思うのです。
p59
投票行動の時に「自分が為政者だったらどうするか」ということを考えてもらわなければ,国民主権ではありません。
p67
ところが年金制度ができたので,子どもに助けてもらわなくても生きていけるようになった。
p120
日本のGNPはある程度伸びているのに,GDPが伸びないのは,海外から投資がないからです。そこには,必ず理由があるはずです。
p183
だいたい日本人が「やむを得まい」と言ってする決断に,ろくなものはありません。
p184
すでに完成された物語を受け身で学ぶのではなくて,自分が当事者としてifの可能性をゲーム的に検証することが歴史を学ぶことなんだと思います。
p192
はっきり言ってしまえば,だからこそ日本には市民社会も民主主義もいまだに根付いていないんだと思う。社会契約も市民社会も民主主義も,全部西洋の「神様は必ず見ておられる」という感覚が社会で無意識に共有されていることを前提に生み出されたものだと思うんですよ。
p211
必要以上にマスメディアの力が肥大化すると民主主義の根幹をなす世論形成がうまくいかなくなってしまう。
p215
ソーシャルメディア的な公共性というものを考えもいいんじゃないか。
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